平成28年度青年経営者の主張大会 高橋 陽介

題目「時間と労力、実はいりません」

プルルル、「知らない番号だな」ピッ「はい、もしもし高橋ですが」

「あっ商工会青年部の根岸ですけど、高橋くん、今度、副委員長やってくれないかな?」

「えっどちらさまですか?」

この1本の電話から、私と商工会青年部との関係は大きく変わり始めました。

 

私は 調布市 商工会青年部、入部2年目の高橋陽介と言う者です。

いまは地元で祖父が始めた不動産業を父と共に営んでいます。

元々は不動産とは全く関係の無い仕事をしていましたが、父の病気がきっかけで、家業を手伝うようになりました。

 

家の仕事を始めて数年が経ち、仕事でお世話になった方の紹介で、商工会の青年部に入ることになりました。

以前に商工会の事業を手伝いに行ったことがあったので、今度は青年部の肩書きで同じように

少し手伝いに行けばいいのかなと、この時はそのぐらいにしか考えていませんでした。

しかし、実際の内容は、青年部独自の事業を自分たちで考え実施していくものが多く、想像以上に時

間と労力がかかる現実に困惑しました。

 

入部して数ヶ月が経ち青年部員としては年齢も高い自分は、執行部の一員である「副委員長」に任命されました。

まさに冒頭の電話の部分です。

正直、入部してまだ間もない自分が、いきなり副委員長やるような組織って大丈夫なんだろうか、

はたして自分が副委員長できるのか?この時は本当に戸惑ったのをよく覚えています。

 

そんな戸惑いがあるなか、すぐに北多摩ブロックの「主張大会」へ応援に行く事になりました。

まず主張大会が何だか分からない私には、なぜ大会形式で主張を述べるのか?なぜ内容以外の評価が

沢山あるのか?何で演劇や落語みたいに過度な演出で話す必要があるのか?疑問は尽きませんでした。

でも、他の市町村の青年部員が発表する「成功例」や「成長体験」を聞いているうちに、「主張大会を

する意味」や「青年部自体」について沢山あった疑問が少し晴れてきたような気がこの時しました。

 

主張大会後すぐに、自分が初めて担当した事業である「納涼会」の準備が始まりました。

青年部の「納涼会」は部員交流の暑気払いなので、それほど複雑な事業ではありませんが、

なにせ初めてだけにアトラクションを考えたり、予算を組んだりと、頭の中は一杯一杯でした。

そしてやっと準備が整い、いざ出欠確認の電話をしてみると、「仕事で忙しい」や「いけたら行くよ」

「予定が入りそうなんで」そんな回答ばかりに、何だか、がっかりしたのをよく覚えています。

幸い事業自体は参加して頂いた方の協力もあって無事に終わりましたが、やり終えた達成感と同時に、

自分1人だけが少し熱くなっていたのかなと、寂しい気持ちにも残りました。

 

よくよく考えれば、青年部の中心となるメンバーは、殆どが三十代の人たちです。

三十代は、仕事が軌道に乗り始め、多くの人が結婚をし子供ができる、人生の中でも本当に多忙で変化の多い時期です。

そんな中、家族との時間を割いてまで、仕事に無理を言わせてまで、

一生懸命青年部活動に参加するのは、正直、難しいのかもしれません。

でもいくら時間が無いからといって、事業自体に参加しないのではなくて、自分のできる範囲で事業

に取り組んでいけば、それが少しづつ積み重なっていって、大きな事業も成功させるにことができるはずです。

 

なぜ私がこのように考えるようになったのかというと、昨年青年部の事業ではありませんが、

有志の人達で集まって実施した調布のハロウィンイベントに参加させてもらったからです。

本当に年齢や性別だけでなく仕事や組織も違う人達が、この街に住む子供達にいっぱい楽しんでもら

いたい、この街をもっと元気にしたい、そんな気持ちでこのイベントは力を増していきました。

何もない状態からスタートし、忙しい日々の中、何度も集まって、仮装パレードや仮装コンテスト

などの企画を考えたり、ポスターやチラシを作ったりと、それぞれが自分のできる範囲で

力を出し合ってこのイベントを少しずつ完成させました。

そしてあっという間に半年が経ち、本番当日には3000人を超える大勢の人で会場は熱気に溢れていました。

私は、やり終えた充実感の中、忙しい日々でも、自分のできる範囲で少しずつ積み上げていけば、

こんなにも大きな事業でもできるんだと言う実感を得ました。しかし、同時に何の後ろ盾もない状態で、

一から事業を作り上げていくのは、本当に時間と労力が掛かるんだと言うこともこの時感じました。

 

私はこのハロウィンイベントと同時期に、同じようなプロセスで、一から企画を考え作り上げてい

く青年部事業にも参加させてもらいました。

これは他団体と共同で「青少年育成」と「商工業の発展」という2つの共存しづらいテーマを元に

全く新しい事業を一から作るというもので、この難しい課題に随分と悩まされました。

議論した結果、調布市内の小学生5000人からアンケートを取り、子供達がオススメする地元の飲食店を

見つけ出し、そのお店に子供達自身に取材に行ってもらい、一冊のグルメガイドを作り、

これを調布市内で販売するといった、そんな企画に行きつきました。

子供達は自分達で取材して本を作りあげていくといった日常では体験できない経験を積み、

また大人が作るグルメガイドにはなかなか取り上げられないような地元の隠れた名店にも数多く焦点を

当てることができ、お店の方にとっても本当に多くの集客を生むことができました。

 

私が体験したハロウィンイベントと子供グルメガイドは、共に一から企画を考え、子供達の笑顔や成

長、街の活性化に寄与するといった同じ目的を達成はしましたが、一つだけ大きな違い感じました。

 

それは母体となる組織が全くない状態で始めたハロウィンイベントは、この事業自体を企業や団体に

知ってもらうこと、その信頼を得ることに、本当に多くの時間と労力を費やしてしまいました。

本来ならば事業の中身に使えるはずのその時間と労力をスタート時点でかなり消費してしまいました。

一方、商工会青年部の事業として実施した子供グルメガイドは、スタートした時点から予算もあり

仲間いて、調布市や小学校、取材店舗の協力もスムーズに受けることができ、すぐに事業の中身に力を

注ぐことができました。

もし自分の街の為に何か事業を始めるとした時に、少しでも支えになる母体があれば、その事業を効

率よく成功に導くことができると、私はこの時、強く感じました。

 

いま実際に商工会青年部に関わりのない若い自営業者もこの街で順調に商売をしています。

自分の近くのお店でもいつも繁盛していて忙しいせいか、何の会にも所属せず、街の行事の手伝いを

お願いしても「こっちは仕事で忙しいんだよ」とすぐに断る人がいます。

確かにお店が繁盛しているのなら、それだけしていればいいのかもしれません。

でもこの街で日々地元と向き合いながら自営業を営んでいる者は本当にそれだけでいいのでしょう

か?私は少し違うと思います。

いま自分がそこで商売ができているのは、多くの先人達がこの街を良くしようと日々苦労を重ねて、

この街を作り上げてくれたからです。そんな先人達が苦労して作り上げてきたこの街で商売していて、

自分はその街に対して何の貢献も協力もしないは、少し考えが甘いんじゃないかと思いました。

良い状況は長くは続きません、街は日々変化します。

誰かが何かアクションを起こさなければあっという間に何も起きないつまらない街になってしまいます。

かといって忙しい日々の中、自分自身で事業を興して、街の活性化を計るのは、ものすごい時間と労力がかかります。

私は二つの事業を通して得た教訓から、忙しい日々の中で、自分のできる範囲で関わっていき、

街の活性化に貢献できる現実的なツールとして、商工会青年部ほど適した物はないのではないかと思いました。

組織は確立していて知名度もあり、仲間もいて、予算もある、これほど効率的に事業が行える環境が

整っている場所は他にはありません。

 

正直、入部した当初は、夜に何度も集まったり、仕事や休みの時間を使ったりと、何て時間と労力が

かかる団体に入ってしまったんだろうと悩んだ時期もありました。

でも、大きな事業を二つ乗り越えた今では、街を作っていく担い手として、「街の活性化」や「自分の

思いの実現」に、青年部ほど最小限の時間と労力でこれを可能にできる組織は他には無いと今なら自

信を持って言えます。

しかし、いくら効率がいいといっても、今の自分の力では、いきなり大きな事業は立ち上げられませ

んできません。だからまず「初めの一歩」として、青年部と本気で向き合っていくことにしました。

「副委員長だれにお願いしようかな・・・」

ピッ、プルルルルル「はい大澤ですが」

「すみません商工会青年部の高橋ですが、大澤さん、突然で申し訳ないんですが、今度青年部の副委員長やってもらえませんか?」

「えっ副委員長ですか?・・・・・高橋委員長が言うのなら、お受けします。委員長、宜しくお願いします。」

この1本の電話から、私の街への思いは、また大きく変わり始めました。

ご静聴ありがとうございます。