2002年度(H14年度) 準優勝 白鳥泰彦

タイトル「自らの力で立つ」
こんにちは。調布市商工会青年部の白鳥泰彦と申します。
唐突ですが、はじめに私の仕事をお話させていただきます。
私の職業は、「探偵」です。
探偵と聞いてどうでしょう?
「探偵って実際どんなことしてるんだろう?」
「何でそんな仕事やってるんだろう?」
皆さんのいろいろな心の声が聞こえてくるようです。
それはそうでしょう。普通、知合いや友人に、探偵なんて、まず、いませんから。
職業として成り立つのか?それ以前にそもそも商工会青年部にいていいのか?(笑)
かくいう私も、そう思っていました。
ましてや、私の仕事は全てのことに「疑問を持つ」、悪く言えば「疑うこと」からはじまるのです。「職種的に入れてもらえないのでは?」と大変不安でした。
しかし、そのような不安は全く無用でした。何の偏見もなく入部させていただいたのです。
入部のご挨拶もしていないのに、いきなりお誘いがあったのは、今はなき「後継者対策事業」、いわゆるお見合いパーティーでした。
最初に参加した事業がこのような内容のものでしたので、私の青年部の第一印象は「商店主や社長が集まって、仕事を抜きに飲んだり、語ったりする交流の場」として定着しました。
もちろん、そういう「仲良しクラブ」的な交流も確かに大切なことだとは思います。
しかし、私の中で「仕事を抜きに」という部分への疑問が次第に大きくなっていきました。
やがて、それは「仕事やお金の話をしない不思議な団体」。として映るようになりました
残念ながら、私が青年部に入ってからのニ年間で、我々の大切な仲間が三人、倒産や廃業に追い込まれ退部していきました。
偉そうですが、彼らに何をしてあげられたか?
自分の会社の経営が苦しい時に、真剣に相談できる雰囲気が果たしてあったのでしょうか?
ただの飲み仲間なら(もちろんそれもかけがえのない財産ですが)、別に青年部に入らなくてもたくさんいます。
きれいごとではすまされません。
お金の話をしない、出来ない実情、リスクをとらない甘えが、倒産や廃業から退部へとつながる一因となっていると思います。
当たり前ですが、自分の仕事がしっかりしていての商工会であり青年部です。
それではビジネスとは何か?
あまり大袈裟に考えずに、私なりの考えを述べたいと思います。
それは一言で言えば「投資を行い、収益を上げ、社会貢献する」ことに尽きると思います。そして、そこには当然「リスク」というものが発生します。
リスクというと、特に我々日本人は、どうしてもマイナスイメージで捉えがちです。「リスク」を日本語では「危険」と訳しています。そもそも、ここに大きな誤解の原因があるように思います。
「リスク」は決して「危険」「デンジャラス」ではありません。例をあげてみたいと思います。
あなたはいま、とても大切な用事の為に高速道路を急いでいるとします。絶対に時間に遅れてはなりません。このままではどう考えても間に合いません。
そこでいきなり時速三百キロでとばせば、これは「デンジャラス」です。事故をおこし、時間に間に合うどころではないかもしれません。
それでは、法定速度を守っていては間に合わないがニ、三〇キロオーバーでとばしてみたらどうでしょう。もちろん、スピード違反で捕まる可能性はあります。しかし、これは「リスク」でしょう。
このニュアンスの違い、感じとっていただけましたでしょうか?
もちろん時速三百キロでも事故を起こさないし、法定速度を守っていても事故を起こすことはあるでしょう。事故というトラブルは想定できないものであり、事故の可能性が高いからデンジャラス、低いからリスクと分けてしまうのは違うような気がします。
では、これらを分ける明確な線は何か?
それは当事者が、自分がこれから行う行為とそれによって起こるであろう結果を自覚しているか?というのが、分かれ目だと思います。
「自覚」。
「覚悟」「責任」といってもいいかもしれません。
自覚しているのであれば、スピード違反で捕まるのはリスクの範囲内でしょう。しかし、無自覚に三百キロでとばし、事故で死亡するのは「無謀」であり、デンジャラスそのものだと思います。
私にとってリスクとは、事業を行うための必然的な代償、責任なのです。
私の仕事は依頼があってはじめて調査をし、報告して、報酬を戴く。「受注型」産業です。「探偵物語」の松田優作のように事務所でふんぞりかえっていて依頼が入ってくるわけではありません。
一に宣伝、二に宣伝なのです。
具体的に申し上げますと、月の売上の六割以上は宣伝費に投入しています。しかし売上が悪くても宣伝費は削りません。
これが私のリスクです。
大量の宣伝費を使っても収益を上げられる自覚、覚悟があるからです。
私に限らず、ご商売をされている、ここにいる皆さん、誰もがリスクを抱えていらっしゃると思います。ところが、ご自分の商売から離れ、こと青年部の活動になるとどうでしょう?
青年部の事業を振り返る時、果たして皆様リスクを背負って、または意識して活動しているでしょうか?
限られた予算内でやりくりして、前例に従って判断し、最後に収支を合わせる。ここでは、具体的な成果や動員、売上は求められていません。
入部して間もない昨年12月、『防犯セミナー』というものを開催いたしました。私が講師となり、ピッキングや車輌盗難の実態や対策などを錠前や防犯機材をご覧いただきながら部員の皆さんに防犯の重要性を認識していただきました。
しかし、正直申し上げて、「これを機に私のビジネスにつなげていきたい」という思いがあったのも事実です。こういうと「商売っ気丸出し」と嫌な顔をされるのでは?との心配もありました。
それは冒頭で申し上げた「仕事やお金の話をしない不思議な団体」という印象が、私の中に根強く残っていたからです。しかし、部長はじめ部員の皆さんが「それのどこがいけないの?」とあっさりと励ましてくれ、私は青年部の表面的なものしか見ていなかったことに気づかされました。
さて、ここでまた私の仕事の事ですが、私の「探偵」という仕事の社会的役割、使命について考えてみます。
それは「人に安心を与える」ことです。
個人または会社にとっての疑問を調査し、問題を解決するお手伝いをする。つまり「依頼者の不利益を回避する」そういう仕事です。
では、それを青年部活動の一環である「まちづくり」につなげて考えてみます。
「よいまち」とはいったいどういうものでしょう?
もちろん、一言で簡単に言い表せるものではないとは思います。
ただ、「住民が安心して住める」これが全ての大前提になるのは間違いないと思います。
「安心して住めるまち」
これは単に治安が良いということだけではないような気がします。もっと、一人一人の精神的なものではないでしょうか。つまり、住民一人一人が精神的に自立し、互いを尊重しあう愛情に溢れた環境。
そして、これを支えるのが経済的な自立だと思うのです。
自立というのは文字通り、「自らの力で立つ」ことです。何か他の大きな力に依存したり、よりかかることではありません。全て自己責任です。
これは一見、「自分さえよければ良い」という自己中心的なものにみえるかもしれませんが、決してそうではありません。
自立するためには、必ずリクスが伴います。それを受け入れる強さが必要になります。それを、「試練」とだけ思わずに、皆が前向きに立ち向かい、自立したとき、はじめて隣人への尊敬、愛情が生まれるのではないでしょうか?
治安、システムやサービス、施設といったものはあくまで「まち」というものを外側から矯正するものに
過ぎません。
そうではなく、我々一人一人の内側からしか「よいまち」というものは生まれないような気がします。
青年部に入部して「仕事やお金の話をしない不思議な団体」と思っていた頃の私は、単に組織を外側から眺めているだけの傍観者でした。
そんな私が、今、この場で「内側から変わって行こう」というお話をしています。こういう気持ちにさせてくれたのは、青年部のたくさんの仲間との交流や事業を通してということに間違いありません。
斉藤部長がよく「青年部はきっかけづくりの場だから…」とおっしゃいます。
あえて、かっちりと決め事で縛らずに、その場で何かを学んだり、考えるのは部員一人一人の自主性だということだと思います。
リスクをとるもとらないも自由です。
しかし、私はこれからもリスクを取り続けます。言い古された言葉ですが「テイク リスク、テイク チャンス」といつも自分に言い聞かせています。
そうです。
リスクを取らない者にチャンスはないのです。
この青年部は、私にいろいろな人のものの考え方、いろいろな角度からのものの見方、そして何よりも、こうして、このような場で自分の主張を発表できる機会を与えてくれました。
青年部はリスクをとれる集団でありたい、また、そうであると信じています。
ありがとうございました。